2021/10/12 18:47

UMWLT2021 AWのご支援ありがとうございました!


今年の春から始めたUMWLTですが、半年経ってようやく1枚の壁画を描くことができました。

みなさまのサポートのおかげです。



描いた壁画についての情報は、制作中に取り上げて下さった下記メディアに端的にまとめていただいたのでそちらをご参照ください。



左から「滋賀夕刊」「中日新聞」「長浜経済新聞





さて今回の記事では、こちら↑で触れられていない以下のことについてまとめました。

(ながーくなっちゃったので携帯で見た方が見やすいかも)

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・記事の補足

・実際に現地で感じたこと

・今後のUMWLT

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・記事の補足


そもそも「日本で一番古い形で伝わる羽衣伝説と、その類話SWAN MAIDENをオーバーラップさせた壁画」をその伝説が残る余呉に描くことは、「伝言ゲームの答え合わせ」のようでもあります。それは1箇所から端を発した同じ物語を1枚の絵に描くと、そのズレが明らかになるからです。

実際に有史以前にギリシャと日本という1万キロ近く離れた地に口承で伝わった物語は、そのモチーフや結末にわずかなーー距離と時間を考えれ誤差とも言える程度ですがーー伝言ミスが起きているようでした。



それは=コミュニュケーションのズレであり、人が「気持ちを相手に完全に伝えることは出来ない」という意思疎通の限界を示してるようで、僕の制作に共通するテーマ「世界はバラバラのまま繋がっている」という観点からもとても興味深いものでした。



この企画を考えてからというもの、羽衣伝説をはじめとして世界規模に広まった伝説・民話・神話を机上で調べる日々でしたが、実際に余呉での制作中には新たな発見がいくつもありました。




・実際に現地で感じたこと


制作中にはたくさんの地元の方が話しかけてくれます。

その全ての方は当然、羽衣伝説を自分の町が起源の伝説だとご承知でした。しかし興味深いことに、同じ余呉町の中でも人によって結末や話の記憶に差があったり、物語の解釈や理由づけは人それぞれでした。(なんか色々あぶなくてここでは書けない話もありましたが笑)

なかでも飛び切りは、通りかかったお話好きの観光協会長が語って下さった視点です。長い時間(長い時間)たっぷり(たっぷり)と話をしながら、「世界に散るSWAN MAIDENの類話」という視座から、国内以外にもヨーロッパやアジアのそれらを挙げながら余呉の羽衣伝説を客観的に見下ろす様は、マジ白鳥の如しでした。羽衣伝説とはいえ、ギリシャ版のように白鳥が美女に変わるという形で残っているのは日本の中でも最古の形で伝わった余呉だけだそうです。




他にも町に残る昔話や、それらを地域の小中学校に講演しにいくと語る協会長の話を聞きながら、僕が感じていた疑問は「なんのために違う世代に向けて昔話を伝えていくのか?」ということでした。言い換えれば「人はなぜ物語を生み出すのか/伝えるのか(人のコミュニケーションは不完全なのに)」という事で、これはこの企画を始めた当初からの僕の疑問でした。

TVドラマ, NETFLIX, 小説や漫画、到底1人で見切れない創作話は日夜作られ続けています。その中でも超オールドスクールな昔話というフォーマットが土地にとってどう「機能」してきたのか?



その問いには(なぜか)答えずゆらゆらと他の話に横スライドしていく協会長を眺めながら、しかしハタと感じたことがあります。


土地に残る話を伝えていくということは、その土地で生きるための術を世代を超えて伝えていくということなのかもしれない。

余呉に例年より早く雨季が来たら?いつもより多く雪が降ったら?その土地で起きる変化にいち早く対応し、対策をとるために、世代を超えて物語を伝えている、ということか。



机上で調べた限りでは昔話の機能には、娯楽や教育それに統治の根拠証明であることが多いようでしたが、「教育」とは「その土地で生きるための教育」であるのだと、その時理解できました。



昔話はその原話が生まれた土地が重要なのではなく、話が伝播していく過程で似たような特性を持った民族・土地に伝わった際に、文字どおり「採用」され、モチーフをすげ替えつつも、新たな土地で自分たちが生きるための物語として息づき始める



これは人によっては当たり前の話に聞こえるかもしれません。でも僕は全然思い至りませんでした。なぜならその「土地で生きる」という感覚が、自分には欠如しているからです。

日々の食生活はスーパーや通販で賄うので、時間や季節に関わらず同じ暮らしができてしまう。輪をかけてネットで世界中に繋がってるから、身体性さえも昔ほど意識しなくても生きていける。国外のフェスもネットで観れるし、絵を描いたりキーボードを叩く程度の肉体労働では、当然身体の重要性も下がります。昔のように一生を同じ土地で過ごす人が減っていくにつれ、そんな「特定の土地で生きていく」という感覚がない自分には、土地土地にカスタマイズされた有り難い昔話の効能が知覚出来ていなかったのでした。




今回僕にとって象徴的だったのは、そんな自分が体験を通して学ぶことは大切という(これまた月並みな)事に目が向いたことだと思います。

机上の下調べでは気がつけなかった事に、余呉で町の人から話をしてもらって抱えていた疑問を解決できたことが、なにより小気味良く達成感を感じました。

これからもデスクワークとして事前にラフスケッチを作り込んだ上で、現地でフィールドワーク的により良いものに高められればと思います。







・今後のUMWLT


さて、一番大きな課題は「壁を見つける事」にあります。

これから先もこの活動を続けていく上では「作品として好きに絵を描いていい壁」を」見つけていくことが至極必須となります。現時点でいくつかの候補先へアタック中ですが、現状まだ確約を得られていません。

ここまで長文を読んでいただいた皆様へお願いをするのは気が引けますが笑、読んでいただけたということは一握のご理解を得られていることと思います。どうか、描いていい壁をご存知/お持ちでしたら是非ご連絡をお願いします!




長々と、なかなかまとめきれない駄文を読んで下さりありがとうございます。

ひとまず第一弾の壁画が完成しました。今後ともどうぞ宜しくお願いします。

次回の記事では商品発送の報告とUMWLT出納帳をご開帳いたします。